沈黙は捨てた!告発する・・・神父を告発する!
一人の勇気ある告発者は、長年の沈黙を破り教会の暗部を照らし出していくのでした。
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、神父から幼少期に性的虐待を受けた者たちが結託して教会と闘った実話を基にした作品です。
フランスを震撼させたプレナ神父事件
「プレナ神父事件」とは、神の僕として教会に仕えるベルナール・プレナ神父が長年にわたって教区の信者家庭の少年たちに性的暴力を加えていたという事実が明るみに出たのです。
この衝撃的な事件は一人の勇気ある告発者から端を発し、結果的には80人以上の被害者が名乗りを上げ、カトリック教会内部をも揺るがす性的虐待事件としてフランスやヨーロッパを震撼させました。
本作は幼少期に神父から性的虐待を受け、何十年経ってもそのトラウマに苦しむ男たちが虐待を告発するまでの姿と、告発した事による社会や家族との間に発生した軋轢・代償・そしてそれを支える家族の愛などが描かれます。
あらすじ
アレクサンドルは幼少期の時、性的虐待を受けました・・・行為に及んだのは、プレナ神父。
それから数十年後のリヨン。
アレクサンドルは家庭を持ち、妻と子供たちと共にリヨンに住んでいました。
ある日訪れた教会で、幼少期に自分を性的虐待したプレナ神父が、いまだに子供たちに聖書を教えていることを知り愕然とします。
対面したプレナ神父は、自身の小児性愛的志向を認めながらも長年子供の近くで指導者として活動していたのです。
そして、リヨンの大司教はそれを知りながらバチカンに報告しなかったのです。
アレクサンドルは、これまでの沈黙を捨て家族を守るため過去の出来事の告発を決意します。
その後、長年一人で傷を抱えてきたエマニュエルらなど、幼少期に同じ被害にあった男たちの輪が徐々に広がっていき・・・プレナ神父を告発しました!
果たして、彼らが過去の沈黙を捨て人生をかけた告発の行方は?
ネタバレ
アレクサンドルたちは、プレナ神父を告発しました!
しかし、教会側はプレナ神父の犯した罪を認めつつも彼を擁護し、その責任は巧みにかわそうとするのでした。
しかもアレクサンドルたちは、沈黙を破った代償としてその出来事を知った社会や家族との軋轢とも戦わなければならなかったのです。
そしてプレナ神父は告発され裁判にかけられるが、一連の出来事を前に教会は責任を逃れ逃げおおせるのでした・・・。
フランソワ・オゾン監督の最新作
フランスで現在も裁判が進行中の「プレナ神父事件」を題材にした本作は、第69回ベルリン国際映画祭で、銀熊賞・審査員グランプリを受賞しました。
『17歳』や『危険なプロット』で知られるオゾン監督は、得意とするこれまでのスタイリッシュな映像や幻惑的な作風を封印し、幼少時代に受けた被害者たちのトラウマに寄り添いながら、彼らが人間としての尊厳を取り戻す戦いを静謐に描いています。
本国フランスでは、公開と同時に衝撃的な内容と共に大ヒットを記録しました。
出演は「わたしはロランス」で圧倒的な存在感を発揮したメルビル・プポー、「ブラッディ・ミルク」でセザール賞を受賞したスワン・アルロー、
ベネチア国際映画祭監督賞受賞作「ジュリアン」の父親役に扮した実力派のドゥニ・メノーシェ。
本作で3人揃ってセザール賞にノミネートされ、スワン・アルローが助演男優賞を受賞しました。
海外の反応やモデルとなった人物
本作は、実際に神父から性的虐待を受けた過去を持つ人たちが被害者団体を立ち上げ、「新たな被害を食い止めたい」という決意から、神父を告発するまでの実話を基にした社会派ドラマです。
映画の海外での反応として、なぜ被害当時に発っせられただろうと思われる少年たちの声が家族の手によりもみ消されてしまったのか? という疑問があります。
相手が教会という強大な組織だから? 神父さんだから? あえて事を荒立てない方が良いという諦めなのでしょうか・・・でも、幼少期に受けたその時のトラウマはいつまでも残るのです。
また信仰と信頼の場である教会、神の僕である神父、その神父に裏切られた時信仰は揺らぐのでしょうか? というコメントもあります。
ラストでアレクサンドルの息子は ”パパ、まだ神を信じている” と、父に問いかけます。
その質問にアレクサンドルは、ただ含み笑いで返すのでした。
裁判の行方
告発されたプレナ神父は聖職を剥奪され、被害者らの人生を踏みにじり保護者と教会上層部の沈黙に付け入ったとして禁錮8年を求刑されましたが、2019年7月に禁固5年の判決を受けました。
また、リリヨン大司教区のフィリップ・バルバラン枢機卿も聖職者の性的虐待事件を隠蔽したとして執行猶予付きで、禁固6カ月の有罪判決を受けました。
何と、プレナ神父は上司の聖職者に自分の性癖について相談したが適切な指導も無く、彼をそのまま神父にしていたのです・・・皆、知ってて黙っていたのです!
本作が公開された後は、世界中の聖職者による性犯罪も明るみに出され映画の影響は大きかったと報道されています。
まとめ
信頼のある教会、神の僕である神父、その神父が児童に性的虐待を加えていた・・・。
そのトラウマを抱え生きてきた男たちは、神父を告発します!
本作は、神父に性的虐待を受けた被害者たちが数十年抱えた沈黙を捨て、告発をはじめる衝撃の実話です。
フランス映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』2020年7月公開予定。
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