少女は首にロープをかけ、スマートフォンで自撮りをしたところで映像は切れる・・・
その衝撃的な動画は人気女優の元に、動画メッセージとして届きました。
彼女は本当に命を絶ってしまったのか!? メッセージのその目的は?
映画『ある女優の不在』は、女優を夢見ていた少女の行方を探りながら、3世代の女優たちの心の旅路が描かれるヒューマンミステリーです。
イランの映画
イランでは1979年のイラン革命後から政府による検閲が強化され、映画や文学・絵画もイスラームの教えに沿ったもののみが許され、
表現活動も少しでも政府に対する批判が含む映画は排除されたり、それを製作した監督も政治犯として有罪判決を受けていました。
政府の厳しい検閲の中で、自由を訴えたアーテストも国外追放されたり亡命したりで、多くのフィルムメーカーも”表現の自由” を求めて母国・イランを去りました。
そんな国内の厳しく不公平な制限化でも、一部の映画監督は不屈の魂で内密に撮影を実施しその映像はお菓子に忍ばせたUSBで出国し、カンヌ映画祭へと向かう作品もありました。
危険と犠牲を払いながら出国したそれらの映画も、質の高い作品として世界中に認められついには諸外国での撮影やイタリア・フランスとの共同製作にも発展しました。
自国の不公平な検閲という縛りから解放された、イラン映画監督の作品に期待大デス!
イラン映画『ある女優の不在』も、権力の圧力に屈しないで映画を製作し続けるジャファル・パナヒ監督の最新作です。
ざっくりあらすじ
イランの人気女優ベーナーズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から動画メッセージが届く。
その少女・マルズィエは女優を目指して芸術大学に合格したが、家族の裏切りによって夢を砕かれ自殺を決意しました。
その動画は彼女が首にロープをかけ、自撮り用のスマホが地面に落下したところで途切れていた。
そのあまりにも深刻な内容に衝撃を受けたジャファリは、友人である映画監督ジャファル・パナヒが運転する車で、マルズィエが住むイラン北西部の村を訪れます。
そして撮影場所の洞窟を探索するが、そこには彼女の遺体も首を吊ったロープもスマホも見当たらなかった・・・
彼女は本当に、自らの命を絶ったのでしょうか?
ジャファリとパナヒは現地で調査を進めるうち、イラン革命後に演じることを禁じられた往年のスター女優・シャールザードにまつわる悲劇的な真実にたどり着くことになるのでした。
本作は女優としての”未来”を奪われた少女の自殺問題を発端としながら、女性の人生という切実なテーマを掲げ、世代を超えた3世代の女優の人生を交錯させた物語です。
キャスト&監督
イラン映画『ある女優の不在』は、脚本・監督・製作は全てジャファル・パナヒ監督が行っています。
イランの名匠ジャファル・パナヒ
ジャファル・パナヒ監督は、長編デビュー作の『白い風船』でカンヌ国際映画際新人監督賞、『チャドルと生きる』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞『オフサイド・ガールズ』でベルリン国際映画祭銀熊賞を相ついで受賞し、わずか10年余りで世界三大映画祭を制し名実共にイランを代表する国際的なフィルムメーカーとなりました。
しかし映画の内容が社会の不条理を描いたということで、政府当局に目をつけられ2回も逮捕される事となり、2010年には20年間の映画製作の禁止を命じられました。
それでもパナヒ監督は自宅軟禁中に3作品を作り上げ、カンヌなどに出品しました。
その断固として権力の圧力に屈しない姿勢と映画の作風で賞賛を集めてきました。
パナヒ監督の最新作『ある女優の不在』は、3人の女優をめぐる過去・現在・未来の深遠なドラマを映像化し、2018年の第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞しました。
主要キャスト
3人の女優を描く本作では、イラン女優べーナズ・ジャファリが主役に起用されました。
彼女はイランの多くの映画や人気TVシリーズに出演している有名な女優さんです。
2人目はパナヒ監督が通りで偶然に出会い、その役を演じる事に確信した.マルズイエ・レザイが起用されました。
そして3人目は伝説的なイラン映画スターで、国民の誰もが知っているシャールザードが出演に快諾しました。
3人の女性の物語
ある女優の不在 https://t.co/F8i3yAUSVJ
パナヒ監督の新作が見られる!!
嬉しい*。ヾ(。>v<。)ノ゙*。— Monica (@Mag17Ldb) 2019年10月25日
パナヒ監督は当初の構想で、イランの映画史を振り返りながら過去の時代にさまざまややり方で政府が芸術家たちを妨害してきたものについて探りたいと思っていました。
パナヒ監督は、あることを機に過去・現在・未来という3つの世代に生きた3人の女性を通してそれを描き出すアイデアが生まれました。
本作では、過去として今は隠遁生活を送る元スターの老女優・現在として今を必死に生きる女優・そして未来の女優志望の少女という3人の女性の物語が綴られます。
これまで政府から映画製作を禁じられたパナヒ監督の、新たな挑戦作ともいえます。
海外の評価
映画『ある女優の不在』は、脚本・監督・製作は全てパナヒ監督が行っておりこの作品で、2018年の第71回カンヌ国際映画祭・コンペティション部門で脚本賞を受賞しました。
映画は冒頭からまるでミステリー風な展開で謎解きのストーリーと思われますが、まるでドキュメンタリーのように、現実に起こっているような映像を楽しむ事ができます。
パナヒ監督はこの作品を通して、理不尽な抑圧によって女優のキャリアを絶たれた一人の女優の過去を描きながら、自らも映画製作を禁じられている思いを投影しています。
本作は、それぞれの時代における芸術家たちの苦難を象徴的に映像化した映画として評価されています。
まとめ
イラン革命前後・・・時代に翻弄された3人の女性。
彼女たちは深い孤独の淵に立ちながら、それでも女優として生きる事を決意する!
『ある女優の不在』は、過去・現在・未来という時代を越えた3つの顔が描かれます。
映画『ある女優の不在』2019年12月13日公開
コメントを残す